02 囚われの樒


オレは目を覚ます。
そして、辺りを探った。
樒は、樒はいるのだろうかと。
………いた。
樒は、小屋のすり切れた木枠の格子から、月を眺めていた。
切り裂かれた巫女装束を、それでも前で合わせて、月をじっと見つめていた。
もののふ「樒……」
オレは声を漏らす。
樒「よく眠っていましたね。おまえほどの荒くれたあやかしも、あんなに穏やかに眠るのですね」
樒は静かにそう言った。
無感情というわけではないが、何かバカにされた気分になった。
もののふ「寝首をかくつもりならば、そうすれば良かったではないか。逆に、返り討ちにしてくれるがな」
口が勝手に動く。
そんなことを言うつもりはなかった。
樒「もう、おまえは私など比類なきほど、力を手に入れています」
樒「私は好んで虜となったもの。私がここにいるかぎり、おまえが私以外のものに手を出さないための重しとして」

もののふ「悲劇の人質といったところか」



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